2012年09月19日

脱原発をなぜ私が訴えるか Vol.3【改訂版】

放射能被曝と人体への影響
 
 福島原発の町・被曝周辺の住民の皆さんが、故郷を追われて長年住み慣れた土地を出て行く姿はチェルノブイリで26年前に起きておりました。そして、今もってそこでは何も解決していないのです。それが今、私たち新潟の隣の福島で現実に起きてしまったのです。そして、これからどうなっていくかはまだ誰にも想像できないのです。
 では、人間が一番恐れる「放射能」とはどういうものなのでしょうか。私たちは父親からの精子と母親からの卵子が合体し、1個のいわゆる「万能細胞」から「命」が始まります。どんどん細胞分裂を繰り返して人間の形になっていきます。このような細胞分裂で約60兆個の細胞から人間ができあがります。細胞には核という部分があり、その中では父親から得た染色体と母親から得た染色体が23個ずつ鎖状に繋がっています。これら2本のDNA(デオキシリボ核酸)の鎖は、二重らせん構造にねじれながら「チミン(T)」「アデニン(A)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」という四つの「塩基」でハシゴ状に繋がっています。このハシゴがどんな並び方をしているかによって、その人の遺伝情報が決まるのです。この遺伝情報は、まさに「神業」としか言いようのない方法で複製されていますが、放射線に被曝すると神業で組み立てられている私たちの遺伝情報が切断され、遺伝子異常を引き起こしてしまうのです。DNA.jpg私たちのDNAは塩基で結合されて必要な全ての情報を形づくっています。DNAがお互いを引き付け合っている数eVのエネルギーに比べて、放射線の持つエネルギーは数十万から数百万倍も高いために、被曝によって「生命情報」がズタズタに引き裂かれてしまいます。
若ければ若いほど放射能の影響が強くなります。人間の誕生と成長は、一つの細胞が分裂を繰り返すことで胎児になり、人間らしい形になり、赤ん坊として生まれ、成長して大人になっていきます。その細胞分裂が活発な時期に被曝すれば、放射線によって損傷を受けた遺伝子もどんどん複製されていきます。それで小児がんや白血病が引き起こされるのです。平均的な放射線感受性を持つのは30歳ぐらいまでの若年層で可能性が大きく、50歳を超えるとがん死の可能性はほとんど無くなるといわれています。ですから、成長期の子どもが摂取する学校給食などは徹底的に安全にこだわる必要があります。政府は「暫定基準値」を設けてそれを超えた食品を出荷停止にし、超えなければ「安全」と見なしていますが、それは大きな疑問があります。レベルが低いから安全とは言い切れないのです。今の画一的な生産・出荷停止措置は、地域の農業や畜産、漁業を崩壊させてしまうことになります。「汚染されている事実」をごまかさずに明らかにさせたうえで、野菜、肉、魚をちゃんと流通させるべきです。そして「子どもと妊婦にはできるだけ安全と分かっているものを食べさせよう」とすることではないでしょうか。

福島原発事故で今大量に環境に飛び散っているのは「ヨウ素」という一群の放射性核種です。ヨウ素とセシウムは「揮発性」が高く、飛び散りやすいのです。原子炉の中にたまっていたもののうち、もう数%が外に出てしまいました。万が一、これから水蒸気爆発が起こり、圧力容器・格納容器とも破局的に壊れた場合、それらの数十%が環境に飛び出すことになるでしょう。チェルノブイリの時は、原発内部にあったヨウ素の約50〜60%、セシウムの約30%が外に出てしまいました。更に「不揮発性」、つまり飛び散りにくい「ストロンチウム」と「プルトニウム」は、生物学的な毒性が大変に強く人体を激しく傷つけます。「揮発性」が高く、飛び散りやすい「ヨウ素131」は体内に取り込まれると「甲状腺」に蓄積され、そこで放射線を出して甲状腺がんを引き起こす結果となります。ヨウ素131の半減期は8日、これが1000分の1に減るまでには80日。セシウム137の半減期は30年と長く、1000分の1に減るまでには約300年が必要です。セシウム137が人間の体内に取り込まれると、全身の筋肉、生殖器などに蓄積され、がんや遺伝子障害の原因にもなります。ストロンチウム90は骨に蓄積し骨のがんや白血病の原因にもなります。ストロンチウム90は半減期が約29年。「人類が遭遇した最凶の毒物」であるプルトニウム239の年摂取限度は0.000052mgに設定され、半減期は約2万4000年で、1000分の1になるまで24万年もかかるのです。

原子力発電では、プルトニウムを大量に含む「使用済み核燃料」や、それを再処理した際に生じる「高レベル放射性廃棄物」が毎年たくさん発生します。ところで、これが空中に出て来ないよう何十万年もの間、誰がそういった危険なものをきちんと管理し続けられるのでしょうか。外部被曝、つまり放射性物質が人体の外側にある場合、アルファ線は透過力が非常に弱いので「紙一枚」あれば遮断でき、ベータ線は「薄いアルミニウムの板」で止めることができます。しかし、ガンマ線はこれらに比べて透過力が強いので、「厚い鉛板や鉄板」のようなものでないと遮断することはできません。外部被曝ではガンマ線を出す放射性物質が恐ろしく、内部被曝となるとそれは大変なことです。福島原発の事故で今、放射線を直接浴びる外部被曝よりも放射性物質を体内に取り込むことになる内部被曝が最大の問題なのです。
ストロンチウム90、ヨウ素131、セシウム137による内部被曝はベータ線被爆です。さらに深刻なのはアルファ線です。その放射性物質が付着したごくごく近傍の細胞だけが濃密に被曝を受けるのです。ベータ線・ガンマ線から受けるのと同じエネルギーをアルファ線から受けた場合、生物的な被曝として20倍の危険があります。放射性物質を体内に取り込めば1日24時間、何日もずっと内部被曝し続けるので、外部被曝とは比較にならないほど人体への負荷が大きいのです。

 福島第一原発は100万kWの発電所です。ここでは1年間に1トンのウランを燃やしています。10億rです。かつて、東海村で発生したJOC事故や原爆とは比べ物にならないほどの膨大なウランが福島第一原発の炉で燃えて、大量の核分裂生成物である放射能を作り、原子炉の中にどんどん溜め込んでいるのです。すでに原爆80発分の放射能が飛び散ってしまったことになります。まだ放射能は漏れ続けているので、最終的にはもっと増えるのではないでしょうか。
 JOC事故。すなわち1999年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工工場では結局700人近くが被曝し、3人の労働者が大量被曝しました。国立水戸病院では「放射能で汚染されている被曝者の診察はお断り」と言われました。35歳と40歳のお2人は、筆舌に尽くしがたい苦しみの末にお亡くなりになりました。体温が「1000分の1℃」しか上がらない程度でも2人に1人が死んでしまう。そして「1000分の2℃」にも上がったら、もう全員が死んでしまう。どんな人でも助からないのです。
 被曝することによって死んでしまったり、髪の毛が抜けたり、やけどをしたり、下痢になったり、吐き気がしたりすることを「被曝症」といいます。今、福島ではそのような症状が顕著に出ていませんが、近い将来この被曝が原因でがんになってしまう人たちが出てくる可能性はあります。広島、長崎の被爆者はそれを「晩発生被曝症」と呼んでいます。被曝量が多ければ先にも述べましたが、火傷、嘔吐、脱毛、著しい場合は死などの「被曝症」となります。世界的権威のアメリカ科学アカデミーが2005年に出した報告では、「利用できる生物学的、生物物理学的なデータを総合的に検討した結果、委員会は以下の結論に達した。被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。最小限の被曝であっても、人類に対して危険を及ぼす可能性がある。」と結論しています。広島・長崎に原爆を落としたアメリカは、1950年から被曝の健康影響を調べる寿命調査(LSS:Life Span Study)を秘密裡に開始していたのです。広島・長崎の近距離被爆者約5万人、遠距離被爆者約4万人、さらに比較対照のため原爆が炸裂した時に広島・長崎にいなかった人(非被爆対照者)約3万人を囲い込んで被爆影響の調査を進めました。半世紀にわたる調査の結果、年間50ミリシーベルトの被曝量でも、がんや白血病になる確率が高くなるということが統計学的に裏付けされました。

 私たちは原発事故によってきわめて長期にわたる健康被害のリスクを抱え込んでしまったのです。細胞分裂が活発な子どもたち、そして胎児は、成人に比べてはるかに重大な放射線の影響を受けています。sp.jpg
 原子炉から放出された放射性物質=「死の灰」は、風に乗って流れます。風がどの方向に吹いているかで全てを決します。福島第一原発から北西約40qに位置する飯舘村では、原発より北西向きの風が吹いており、チェルノブイリ事故で強制移住させられた地域をはるかに上回る汚染が確認されています。チェルノブイリ事故によって、非常に広い地域が「人間が生活してはいけない場所」になってしまいました。その面積があわせて約15万q2  。これは日本全土の4割に相当します。ところが旧ソ連政府が避難させたのは特に汚染の厳しい地域(15キュリー/q2  )の住民約40万人だけでした。今なお約565万人が「放射線管理区域」以上の被曝環境でさまざまな病気に怯えながら生活しているのです。 
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【参考文献】
小出裕章(京都大学原子炉実験所 助教授)著「原発のウソ」
原田泰(早稲田大学政経学部 教授)著「震災復興 欺瞞の構図」
他科学サイエンス機関誌

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